今週のお題「さむい」

 「鰍沢(かじかざわ)」という落語の演目があります。私は20年ちょっと前に起こった第一期落語マイ・ブームの最中に出会いました。五代目・古今亭志ん生や六代目・三遊亭圓生のカセットテープでよく聴いていたものでした。一昨年暮れから昨年前半頃に起こったNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」の再放送にハマったことに端を発する第二期落語マイ・ブームの時も、そのために購入した安物のラジカセでなんどか圓生版を聞き返したものでした。

 

 「鰍沢」という人情噺のあらすじ等についてはWikipediaの方で → 鰍沢

 

 所謂「大名人」と言われる人の話芸の凄みを感じさせてもらった噺のひとつですね。六代目・三遊亭圓生版のそれは、私的にはその最高峰かも。

 六代目・圓生の口頭による、"身延山への参詣を済ませて帰る途中の旅人が、日も暮れた後の大雪の山中で道に迷い、ようやくたどり着いた一軒の家に宿を求め、快く応じてくれたその家の女将さんのお熊に囲炉裏の前でここにたどりつくまでの顛末を話しながら玉子酒をご馳走になるまで"の描写や、やがて"お熊の悪巧みを知った旅人が、慌ててその家から飛び出し、真夜中に雪の中をひたすらに逃げ、なんとか川べりに繋いであった筏にまでたどり着くまで"の描写には、真夏に聞いていても、まるで酷寒の中を薄着で屋外に居るような「寒さ」を身体に覚えたものでした。カセットテープでだから、ホント圓生の口頭のみの「鰍沢」にも関わらずです。当然、上方落語で言う「はめもの」のような音での演出も一切なし。

 恐ろしくなるような完成度の高い噺であり、六代目・圓生の名人芸でした。


「鰍沢」三遊亭圓生 - YouTube